「パワハラ防止法」の中小企業義務化
「パワーハラスメント防止法」は、パワハラを防止するために、事業主が雇用管理上の措置を講じる義務です。
雇用管理上の措置は、
■就業規則などの含む規律に関する文書の整備
■社内研修の実施
■相談窓口の設置
などの対応が求められます。
2019年5月に成立したパワハラ防止法。先だって2020年6月1日から大企業で施行されましたが、2022年4月1日からは中小企業も対象となりました。
対象となる中小企業は、以下【1】【2】いずれかを満たす企業です。
【1】資本金額もしくは出資総額
小売業/5000万円以下
サービス業(サービス業、医療・福祉業など)/5000万円以下
卸売業/1億円以下
その他業種(製造業、建設業、運輸業など上記以外すべての業種)/3億円以下
【2】従業員数
小売業/50人以下
サービス業(サービス業、医療・福祉業など)/100人以下
卸売業/100人以下
その他業種(製造業、建設業、運輸業など上記以外すべての業種)/300人以下
「パワハラ」の定義
パワハラの定義は「社会的に地位の強い者による、権力や立場を利用した嫌がらせ」を指し、職場におけるパワハラは、
■優越的な関係を背景にした言動であって、
└地位が上位の者による行為はもちろん、同僚または部下も対象です(被害を訴える側の主観によらず、客観的に判断されます)。
例えば
「業務上必要な知識や経験を持っているにも関わらず、協力せず業務の円滑な遂行を妨げる」
「集団による行為で、抵抗または拒絶が困難である」
と、いったケースも対象です。
■業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
└業務上、明らかに必要性のない言動や業務の目的を大きく逸脱した(および不適当な)言動
■労働者の就業環境が害された
これら3点の要素をすべて満たし、関連する言動により
■労働者が精神的・身体的に苦痛を与えられ、
■就業環境が不快なものとなり、
■能力を発揮できない
といった、当該労働者が就業するうえで重大な悪影響(看過できないほどの支障)が生じる状態を指します。
労働者は「パワハラ」をどう感じているか
2020年に厚生労働省が行なった「職場のハラスメントに関する実態調査」内にある、労働者等調査結果(全国の20~64歳の男女労働者8000名)によると、
▼過去3年間に
「パワハラを一度以上経験した」31.4%
▼勤務先の対応は
「特に何もしなかった」47.1%
▼パワハラ行為を勤務先は把握・認定したか
「ハラスメントがあったともなかったも判断せず、あいまいなままだった」59.3%
という結果が浮き彫りになりました。ハラスメント経験者と未経験者の回答を比較すると、経験者は
「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」
「ハラスメント防止規定が制定されていない」
「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」
「従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的にみられる」
と回答した割合が未経験者より高く、大きな差がありました。
パワハラ防止への取り組み
事業主が雇用管理上、講ずべき措置は厚生労働大臣の指針にて定められています。主だった内容をリストアップしてみましょう。
■事業主の方針の明確化及びその周知・啓発 ※ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
■苦情を含む相談に応じ、適切に対応できる体制の整備
■ハラスメント行為が起きた際の迅速かつ適切な対応
■ハラスメント行為者への厳正な対処方針や内容の規定化。およびその周知・啓発
■被害者に対する適正な配慮・措置の実施、および行為者に対する適正な措置の実施(プライバシー保護に関わる措置の周知および実施を含む)
■再発防止措置の実施
また、ハラスメントの相談や情報提供などの協力を理由に、解雇その他の不利益な取扱いを行うことは、法律で禁止されています。
◇
中小企業のみなさんにとって、こうしたハラスメントへの対策をはじめ、雇用管理における様々な施策への対応は負担となる面もあるでしょう。
しかし、こうした施策への対応は健やかな職場環境を生み
◎勤務意欲の向上
◎労働生産性の改善
◎離職率の低下
など、プラスの効果をもたらします。
実際に先述の調査では、「勤務先がハラスメントの予防・解決のための取組みを積極的に取り組んでいる」と回答した労働者は、
「自身の働きやすさ」と「同じ職場の他の人の働きやすさ」
の2項目において「改善された」と答えた割合が多い、という結果になりました。
魅力ある環境は、採用活動の成功に大きく近づきます。この機会を活かして、前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。
【参考】
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査について」令和2年度調査
厚生労働省東京労働局「パワーハラスメント対策等」内、パワーハラスメント対策導入マニュアル(令和3年度版)